ネットや雑誌に溢れ変える自称「成功者」たち

ネット上では、様々な投資家の「成功体験」を目にすることができます。
格安の不動産をリフォームして、倍の価格で売却した…
副業で始めた賃貸経営の収益が、気付けば本業の収入を上回っていた…
年金と退職金をアパートに投資、不動産収入で悠々自適の生活を送っている…

雑誌や不動産サイトでよく見かける典型的な成功体験です。
メディア上ではこうした体験談ばかり特集されていますから、「それならば自分も…」と見切り発車で投資に乗り出す方も少なくないようです。

 

ノウハウの形で流通する都合の良い「未来予測」や「必勝法」

最近では、「東京オリンピックによる地価高騰を見込んで、都市部で有望な開発計画が続々とスタートしている、不動産投資を始めるなら今がチャンス!」というような勧誘も多いようです。
確かに不動産は投資対象として堅実ですし、方法さえ間違えなければ安定した収益を確保できます。しかし、だからといって個人の体験談や成功体験を、そのまま「必勝法」として応用することはできません。
東京オリンピック云々…式の未来予測も同様。
将来的な不動産の値上がりがほぼ確実だとしても、そこから収益を得られるのは一部の有名投資家や大企業、古くからの不動産オーナーに限られています。
投資の世界において、「未来はこうなるから確実にこの方法で儲かる」というのは、大半が机上の空論に過ぎません。

 

それでも「成功者」や「未来予測」が信用される理由

人は何かの情報に触れるとき、「その情報を誰が発信しているか」という点を過剰に重視します。投資を例にすれば、経験者・成功者の発信している情報は信憑性が高く、「この人がこう言っているのだから、大丈夫」式に信用してしまう事例が多いのです。
しかし実際には、情報の発信源が誰であろうと、情報の中身(コンテンツ)の信憑性は変化しません。
「Aという物件は買いだ」と一流の投資家が言っても、投資の初心者が言っても、情報の「中身」は同じなのです。
とはいえ、私たちは普通、そのように考えません。
参考にするのはもっぱら成功者の意見ですし、自称「プロ」の体験談です。そうした心理が普遍性を持っているからこそ、ネットや書籍ではいわゆる「成功体験」ばかりが量産されることになります。(おそらくその大半は「フィクション」です)

未来予測については、「みなが同じことを言っているからそうなるに違いない」と判断されるケースが多いようです。確かに東京オリンピックは、莫大な経済効果を生むかもしれません。しかし、そこから利益を享受できるのは、よほど目先の利く人か、すでに既得権を確保している関係者、大手の資産家に限られるでしょう。
すなわち東京五輪の経済効果は、その規模こそ大きなものですが、それがどのような形で発生し、どこ(誰)に流れ、どういう時間軸で不動産に波及していくのか、その正確な予測はきわめて困難です。そして、「投資で儲ける」ということは、その困難な予測に挑戦することに他なりません。もしも「成功体験」や「楽観的な未来予測」に基づく「不動産投資のすすめ」を見かけたら…その記事は「話半分」程度に受け止めたほうが良いでしょう。